前回はここリュクサンブール公園に置かれている「フランスの女王と著名な女性たちの像(Reines et Femmes Illustres de France)」の中で象徴的な存在のサント・ジュヌビエーブの像のお話をしました。
彼女はパリの守護神として祀られています。
今回も2作品の彫刻をご紹介いたします。
ベルトレード・ド・ラオン
次の彫刻の主人公はベルトレード・ド・ラオン(720年ー783年頃)です。

彼女の夫は小ピピンと呼ばれたフランク王国の王、ベルトレードは740年頃にピピンと結婚したといわれています。
そしてピピンが751年にメロヴィング朝を廃し自らカロリング朝を創始したので、彼女はフランク国王妃となりました。
息子は有名なフランク王カール大帝です。768年にピピンが逝去するとベルトレードは王妃の地位を失いましたが、宮廷にはとどまりました。
彫刻を見てみましょう
ベルトレードは正面を向き、目はしっかりと開き口をきつく閉じていいます。なかなか意志の強そうな顔をしているではありませんか。
頭にはベールをかぶり、その上に冠をかぶっています。髪の毛は短いようですがベールで隠れているのでわかりません。
衣装はドレスのように見えます、上半身は植物模様の縁取りがあり胸のあたりに大きな刺繍のようなデザインが施されています。
そして、腹に緩やかにリボンが結ばれ、その下は襞のスカートになっています。こうしてみるとかなり現代風のデザインに見えます、作者は衣装の時代考証はしたのでしょうが、彼の時代が反映されているのかもしれません。
こうしてみると、ファッションなどまでに興味が広がっていきませんか。
ドレスの上にはマントを羽織っています、このマントのドレープがとてもきれいなことに気が付きましたか?スカート部分の細かい縦じまと、マントの複雑で大きなドレープの対比が魅力的です。
また、彼女は手に鳥を持っています、調べてみるとハトのようです。聖書にはハトが何回か出てきます。これはハトが平和や清らかさなどの象徴であるとともに、イエスが洗礼を受ける際にハトが精霊の形を変えて現れています
作者はウジエーヌ・アンドレ・ウディネ(1810-1887)
マティルダ・オブ・フランドル
2作品目はマテイルダ・オブ・フランドル(1031年ー83年頃)

マテイルダは1031年頃生まれたとされています。
1051年にイングランドのウイリアムと結婚(のちのウイリアム征服王イングランド)
1066年にはウイリアムがヘースティングスの戦いでハロルド(ゴールドウイン家)に勝利し英国王となる、しかし自身ノルマンディー公でもあるのでフランス王の家臣という関係となります。
ここからイギリスとフランスの複雑魔関係の歴史が始まります。
マテイルダはというと、1068年にウエストミンスター寺院でイギリス王妃に即位しました。
そして夫より早く1083年に亡くなっています。
それではマティルダの彫刻を見てみましょう。
彼女はやや右斜め前を向いています。
古い時代の肖像画も見てみましたが、目が大きく鼻の高いなかなかの美形であったようです。
編み上げた髪の毛の上に王冠をいただいています、推測ですが、1068年の王妃の戴冠後の姿だと思われます。とても威厳に満ちた表情をしています。
ファッションはローブの下にスカートをはき、ガウンをまとっています。
シンプルなようですがなかなか凝ったデザインのローブですね、首元と腹部そして裾にに模様が施されています。腹部は布がまかれていてとても粋なアクセントになっています。
スカートはほとんど足を隠してしまう長さで、ドレープはそれほど複雑ではありません。
左手には長剣を持っています、剣先はあたかも地面に突き刺さるかと思われる程です。
マチルド王妃ががっちりと夫が支配する広大な領地を固めている、そんな思いが伝わってくるようです。
右手には右手には飾りのついた短い杖を持っています。これは象徴的に法と秩序を表すもので、両手で、支配と法と統治を表現しているといわれています。
ジャン=ジャック・エルシュー(Jean-Jacques Elshoecht)(1790-1852)
1846-48年に制作
公園でゆっくりとくつろぎながら彫刻という美術品とその中に表現されている意味やかファッションを考えるとても贅沢な時間じゃないですか?それもただです。
1525年4月訪問 i-phone15pro