前回はノートルダム大聖堂の歴史や建物などについてお話ししました。
歴史的な建築物や遺構を訪問する際に少しだけ知識があるだけで、見方がかなり番ってきます。そんなことが旅の楽しみを大きくします。
さて、今回は大聖堂のファサード(正面)の中央の扉についてお話しします。

画像1 最後の審判の門 遠景
大聖堂のファサードには三つの扉があります。
向かって左側が聖マリアの門(portail de Lavierge)
右側が聖アンナの門(portail Sainte-Anne)
そして中央の門が「最後の審判の門」(portail de Jagement)と呼ばれています。
この門のティンパヌムを拡大してみてみましょう。
ティンパヌムとは画像をご覧いただければわかるように半円形の部分の浮彫です。
この浮彫は3層に分かれています。
一番上はキリストが中央に座り両手を見えるように前に出しています。これはキリストが皆を祝福していることを示しています。
そしてその両脇には二人の天使が立っています、向かって右の天使は十字架を持っています、イエスが磔刑に処せられたこのを示しています。そして左側の天使は槍を持っています、中段とのかかわりで、この天使は聖ミカエルであると考えています。
その外側で跪くのは聖母マリア(左側)と聖ヨハネです。
それぞれが纏う衣紋も一様ではなくそれほど凝ったものではありませんが、状況や姿勢をよくあらわしています。

画像2 最後の審判の門 ティンパヌム
そして2段目は裁きの瞬間を示しています、中央に聖ミカエルが今度は天秤をもって描かれています。ミカエルはこの天秤で、その人の善行を図るといわれています、つまりミカエルは日本でいうと閻魔様の役割をしているようです。
しかし見てくださいその天秤の下には悪魔がいて悪い心のほうの秤を下に引き下げようとしています。地獄に引きずり込もうとしているんですね怖いですね。
そして左側の人々は天国へ行くことができた人、そして右側には縄につながれて地獄に引き立てられている人たちが描かれています。
3段目は進行により神に許された人々が次々と復活してくる様が描かれています。
これだけのスペースに、キリストの磔刑そして裁き、さらには復活に至るストーリーが全て描かれているのです。

画像3 最後の審判の門 中景
ティンパヌム以外にも実にたくさんの彫刻が彫られています。
扉の両側には細長い柱像(colonne-sutatues)が並んでいます。(画像1のほうがよく確認できます。)この人たちは聖人や使徒、預言者などを描いています。すごいのはこの人たちそれぞれに顔や衣紋が違っていることです。日本でも五百羅漢さんがこんな感じですかね。
ティンパヌムを取り囲むようにアーチ状に彫られているのがアーキボルト、アーチの縁かざりです。6層の構造になっていてキリスト教世界の階層的宇宙が表現されているといいます。
内側から2層にわたって、天使たちがのぞき込むようにたくさん彫られていますが、これも様々なポーズで描かれていますね。
3列目は預言者や使徒たち見てくださいこれも一人一人違う顔違うポーズ違う衣装で描かれていますね。

画像4 アーキボルト拡大
4列目は殉教した人達だといわれています。このひとりひとりどなたかわかると更に楽しいのでしょうが、分かりません。
5列目は聖職者・司教・修道士など教会での様々な役割を担う人たちですね。
6列目は擬人や信徒たちが彫られています、ここに彫りこまれるためにはいくらぐらいの献金が必要だったのでしょうか?興味の湧くところです。

最後の審判の門の中央には審判者としてのキリストが彫られています。
罪を犯した者たちはまずここでキリストに睨みつけられるわけです。ひやひやしながら国会所まで行ったんでしょうね。
この門が作られたのは13世紀です、それから営々といったい何人の人がこの門をくぐったことでしょう、いったい何人の人が様々な思いを胸に秘めながらここを通過したことでしょう。それは神のみぞ知るということです。(ウイキペディア参照)
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