前回はノートルダム・ド・ロレット教会の説教壇についてお話ししました。
説教壇に込められた様々な仕組みやその美しさ、ご理解いただけたでしょうか?
今回はその対面に置かれている聖母子像についてお話しします。

説教壇と聖母子像の位置関係を示すためにトリミングしてみました、この画像でわかるようにこの聖母子像は説教壇の対面にあります。
トリミングしてみて改めて思いましたがこの教会はどんな画角で撮っても素晴らしい美しさで撮ることができますね。
直線と曲線が絶妙なバランスで配置されていて、それがこの教会の端正さ、そしてその先に視線を誘導していく巧みさ、恐ろしいほどに計算しつくされた光景を作り出しています。
この税母子像ですが、サンジェルマン・デ・プレ教会の後陣に置かれた聖母子像と比べるとかなり質素というか地味な存在に感じられます。
前にも少しお話ししたと思いますがこの教会は全体的に新古典様式で作られています。そのコンセプトは秩序と安定感です、このためどこを見ても整然としていて整いすぎる冷たさを感じます、このためにぬくもりのある木製の説教壇と聖母子像、お祈りに来た人たちが、椅子に座り周りを見回したときに端正な造りの内装の中にふと温かい説教壇と聖母子像が目を奪うように造られたのでしょう。

この聖母子像を見てください聖母マリアの表情はとても豊かに描かれています。
この像の作者は探したのですが分かりませんでした、多分この教会の木製品を作成する工房の作品なのでしょう、そしてこの木彫はバロック的な動きと感情表現が与えられているといいます。このあたりのコーディネートの妙も重要な鑑賞対象ですね。
もう一度この聖母子像を見てみましょうマリアは少し体をひねるようにして胸に幼子イエスを抱いています、頭には被り物をかぶり、衣紋は複雑で重厚です。
足元は金色に光る半円形状の台座にしっかりと立ち、足で蛇を踏みつけています。(金色に光っているのはたぶん参拝者がマリアの足元に触っていくので、もともとの色がはがれて地金が出たものかもしれません。)
このあたりは教会に置かれたほとんどの母子像がそうであるように厳密な教会の規定に従って作られています。
表情は穏やかな中にこれから訪れる我が子の行く先に静かに思いを寄せその予感に憂いを含んだ表情になっています。しかし像全体には世俗性は感じられません。
イエスはここでも変顔に彫られており、世俗の子どもたちとの違いを表現しています。
ここにこの2点の木製の作品が置かれていることで、この場面の印象が変わりそれによってお祈りに来た人たちの心がその先に向けられていくそんな役割があるのです。
2025年4月訪問 I-phne16pro